スタイルは変わっても、カントリー特有の暖かみやシンプルさ、ストーリー性のある歌詞、心に響くようなボーカルは引き継がれており、聴く人を魅了しています。
目次
日本のカントリーミュージックの歴史
日本では戦後、進駐軍から広まったカントリーミュージックは、西部劇の流行と相まって大いに流行します。この頃のシンガーは、ジミー時田とマウンテンプレイボーイズ、小坂一也とワゴンマスターズなど、バンドを組んで活躍する者が目立ちました。
一方で、ウエスタンカーニバル全盛の時代でもあり、この時期が日本でカントリーミュージックがポピュラーシーンに登場した唯一の時期として特筆されます。ウエスタンカーニバルブームはロカビリーブームへ、そしてグループサウンズへとつながって行くことになります。
その後は、とくに本格的なカントリー歌手は現れず、昔からのカントリーミュージックの愛好者も少なくはありませんが、あくまでも日本の音楽シーンの中ではマイナーな存在に甘んじています。今日では、ニューカントリーなどの新しい波が日本にも押し寄せて来てはいますが、どちらかというとこれらの楽曲はポップスとして聞かれているようです。
カントリーミュージックの本流からは外れますが、1960~70年代の世界的な学生運動の高まりに呼応したフォークソングブームの波が日本にも渡来し、主に関西圏を中心としたフォークソングブームが起こりました。
この中で興味深いのは、彼らの中に、カントリーミュージックのメロデイーに日本語の歌詞を付けて歌っていたシンガーが少なからずいたことです。その中でも、高石知也(とザ・ナターシャセブン)は、カントリー系(ブルーグラス系)のメロデイーを使った日本語の歌詞の曲も何曲か作っていたようです。しかし、中には日本語の歌詞を無理やりカントリー系のメロデイーに押し込めた歌作りをするシンガーもおり、本場の優れた音楽性を引き継ぎ、広めるには至りませんでした。
カントリーミュージックの曲調
カントリーミュージックには、ハイテンポで踊りだしたくなるような曲調のものがあるかと思えば、心の奥底に浸み込むようなしっとりとした曲調のものもあります。トラデイショナルな曲の中には、なぜか懐かしさを感じさせるものも少なくありません。とくにブルーグラスは、高音を特徴とする音程と日本人に好みの感傷的なメロデイーが魅力的です。
このような感傷的な音楽であるにもかかわらず、多くの曲が基本的にマイナー(短調)ではなく、メジャーで演奏されるのが特徴的です。
そして、上記のようなカントリーミュージックの雰囲気を醸し出しているのが、様々な楽器の音色でしょう。
カントリーミュージックの使用楽器
初期のカントリーミュージックは、主に弦楽器主体のアコーステイックな楽器編成でした。ギターとバイオリン(フィドル)が必ず入り、これに加えて、バンジョー、マンドリンなどが加わります。
この他、リゾネーターギター(ドブロギター)とステイールギター、また、トラデイショナルカントリーミュージックによく用いられるマイナーな楽器としては、オートハーブやダルシマなどがあります。
近年になって、カントリーとポップスの境界が不明瞭になってくるに従い、カントリー系の楽曲にも、ベース、ドラム、キーボード、ピアノなどが加わって、音にぐっと厚みが出てきました。
フィドル(バイオリン)
いわゆるクラシック音楽で使われるバイオリンのことです。
同じ楽器ではありますが違う音楽ジャンルで使われるために、テンポのとり方やリズムの刻み方などの奏法が違うために異なる名前が付いたものと思われます。ラシック音楽のバイオリン奏者がカントリー系の曲にトライすると、譜面通りには弾けるものの、カントリー風ではない無味乾燥な曲になってしまうようです。
このことは、例えばオペラ歌手がシャンソンを歌うと、クラッシック風のシャンソンになってしまうことと同じように言えます。また、フィドル奏者の方が型にとらわれない、アドリブを味付けとして加えた演奏をすると言われています。代表的なフィドラーとしてはVassar Clements、Benny Martin、Mark O’Connorなどがいます。
ギター
19世紀までのカントリーミュージックの黎明期におけるギターはガットギターのみであり、あくまでも宮廷音楽や極めてシンプルな演奏スタイルのダンスの伴奏用などに使われていただけでした。
C&Wが本格的に始まった1920~30年代に入ってステイール弦が開発されてから、ギターは単なる伴奏用ではなく、カントリースタイルでの本格的な演奏の主役に躍り出るようになります。その結果、Chet Atkins, Clarence White, Doc Watson, Tony Riceなどを始めとするカントリー系のスーパーギタリストが多数輩出されるようになります。また、ハワイから入ってきたステイールギターやドブロギター、さらにエレキギターなども交えて、ギター演奏のレパートリーが広がって行きます。ドブロギターでは、Tut Taylor、Brother Oswald、Jerry Douglasなどが活躍しました。
マンドリン
カントリーミュージックにマンドリンが登場するのはBill Monroeが出てきた1930年代に入ってからで、ギター、フィドル、バンジョーと並んでなくてはならない重要な楽器の一つとなりました。
カントリーミュージックで使われるマンドリンは、ロシア民謡で知られたマンドリンとは異なります。胴体の裏側が平らなフラットマンドリンと言われるタイプで、重奏ではなくソロで演奏されることが多くなります。
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