オルタナティブロックのすべて 意味・起源・音作りからオルタナを知る

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今回はオルタナティブロックとはなんぞや、と疑問に思っている方のための記事です。

自分の好きなバンドについて調べていたらWikipediaなどに「ジャンル:オルタナティブロック」と書かれていたことを経験した方も少なくないはず。現在の日本でもこのジャンルに当てはまるバンドはかなり多い印象ですが、しっかりオルタナティブロックについて知っている人は少ないように思います。

この記事がアーティストや音楽をより詳しく知るきっかけとなったら嬉しいです。

 

目次

オルタナティブロックの意味、起源とは

まず、オルタナティブロックとはなんなのか、どのようにして生まれたのか解説していきます。少々アカデミック寄りの内容となりますが、音楽を知る上でその時代の背景や歴史を学ぶことは不可欠です。

 

意味

ロックやメタルとはまた一味違った独特な世界観を作り出しているオルタナティブロック。基本的には「オルタナティブロック」と正式名称で呼ばれるか「オルタナ」と略して呼ばれるかどちらかになるこのジャンルですが、「ロック」と名が付く通り、ジャンルとしてはとても幅広い「ロック」の1ジャンルとして位置づけられている音楽です。

「オルタナティブ(Alternative)」とは英語で、「代わりになる」「二者択一の」「型にはまらない」「新しい」という意味があります。それがRockとくっつくことで「新しいロック」「型にはまらないロック」といった意味合いでAlternative Rockと呼ばれています。

 

起源

オルタナティブロックは1980年代から1990年頃にアメリカを中心にブームを巻き起こした音楽ジャンル。その自由な音楽性からその後様々な音楽ジャンルを生み出すこととなった存在です。

 

1980年代のアメリカの音楽といえば1970年代の後半から続くA.O.R(Audio Oriented Rock)が主流、しっとりと聴かせるロックや労働階級や貧しい人々に響いたカントリーミュージックが多く歌われていました。

A.O.Rであればボビー・コールドウェル(Bobby Coldwell)クリストファークロス(Christopher Cross)が有名どころ。ゆったりと落ち着きのあるムーディーな楽曲を中心に歌っていたアーティストです。ドラムやギター・ベースなどのリズム隊の構成は現在と変わりませんが、そこにシンセサイザーやストリングスやマラカスなどが加わっており、現代でいうバラード調のテンポをベースにしっとりと歌われる音楽でした。

また、カントリーソングの有名どころは、ジュース・ニュートンウィリー・ネルソンなどが挙げられます。ジュース・ニュートンは今で言うポップス寄りな明るくノリが良いテンポの楽曲が中心。反対にウィリー・ネルソンは王道カントリーとでも言うべき存在で、アコースティックギターでしっとりと歌い上げるタイプのアーティスト、A.O.Rと同じくスローテンポ(バラード調)な楽曲がメインでした。

そうした音楽が流行している中そんな中、政治や社会的な体制に不満を持ち、それを音楽や歌詞に乗せて主張するパンクロックが若者を中心にムーブメントを起こしていくことになります。

A.O.Rやカントリーミュージックの優しい音楽と比べ、歪んだギターの音や力強いドラミングのパンクロックの持つ野蛮性や衝撃度は大きかったのですが、そんなパンクロックも次第に商業的なものに移り変わっていき、さらに若者に刺さる攻撃的なリズムや歌詞で訴えかけるハードコアと呼ばれるコアなジャンルが登場。オルタナティブ(新しい)ロックと呼ばれるオルタナティブロックシーンの日の出が始まります。

 

フォークやカントリーミュージック、A.O.Rやジャズ・ブルース、ヒップホップなど様々な音楽性が1つの国に集まっているアメリカだからこそとはいえますが、こうして様々なアメリカの地方都市で生み出されたオルタナティブロックのシーンからパンクロック、ハードコアなどのスタイルをルーツにして生まれた音楽ジャンルが「オルタナティブロック」です。

 

オルタナティブロックが生み出したジャンル

パンクロックやハードコアのスタイルをルーツに発展したオルタナティブロックは、その後の音楽シーンに大きな影響を与えることになります。それが、グランジ(グランジロック)です。

パンクやハードコアの攻撃的で個性的なスタイルから、メロディーのあるより音楽的なものへと移り変わったものがグランジで、1990年代初めにはカリスマ性のあるグランジバンドが次々と誕生し、現在でも活動しています。

当時のグランジバンド、そして世界的にも有名なアーティストの代表として挙げられるのはニルバーナ(NIRVANA)でしょう。ボーカルのカート・コバーンが世界に与えた衝撃は非常に大きなものでした。ニルバーナの楽曲は激しく歪んだギターにエモーショナルに叫びつつもメロディックなボーカルが乗る正にグランジの代表的なスタイルとなっています。

上記バンドのようにオルタナティブロックが持つ攻撃的なリズムをそのままに更に激しく歪ませたギター・ベースサウンドを軸に、メロディアスなボーカルが反社会的、攻撃的な歌詞を歌うサウンドは今でも様々なアーティストにスタイルとして取り入れられています。

 

オルタナティブロックの定義とは

 

定義

オルタナティブロックは1980年代の後半から1990年前半までにアメリカでブームになった音楽ジャンルの1つですが、ジャンルの区分はざっくりとしており曖昧で明確に定義されているものではありません。

先にご紹介したように、貧困や政治への不満を歌ったパンクロックやハードコアなどのスタイルから発生した音楽ジャンルで、パンクロックやハードコアと同様に貧困にあえぐ当時のアメリカに対する不満が音楽の源となっていました。

 

背景

オルタナティブロックがブームとなった当時、アメリカは貿易赤字と財政赤字の真っ只中にあり、レーガン大統領が掲げたレーガノミックスの失敗により極度に開いてしまった富裕層と貧困層の格差は深刻なものでした。政府をあげて貧困者への補助を行っていたという経済的にも非常に苦しい時代背景も相まって、パンクロックやハードコアなど、若者の心に刺さりやすい刺激の強い音楽が求められていたのだと考えられます。

当時の若者に刺さったパンクロックやハードコアと言えばパンクロックでは、ラモーンズ(RAMONES)が有名所でしょう。メンバー全員が「ラモーン」の性を名乗り、曲自体も2~3分程度の短い楽曲が多いのですが、エッジの効いたギターリフにシャウトに近い表現でメロディーを歌う姿は日本でも多くのバンドに影響を与えました(日本で言うのであれば、「リンダリンダ」で有名なブルーハーツのようなスタイルです)。

また、ハードコアではナパーム・デス(Napalm Death)ブラック・フラッグ(Black Flag)が有名どころです。1980年代前半にリリースされたブラック・フラッグの曲はそれまでの音楽シーンを引っくり返すほどオーディエンス性が高くスピーディーで激しく、ライブでオーディエンスが叫びながら飛び回る姿が見えるハイテンションな曲をリリースしています。また、ナパーム・デスはUKのバンドですが、ギネスに「世界一短い曲」として認定されているほどエキセントリックなことをしている有名なバンドで、「ブラストビート」と呼ばれるコアやデスメタルなどでも御用達となっているドラミングスタイルを確立したパイオニア的なバンドです。これらの攻撃的な音楽に当時の若者は刺激を求めていたのだと感じます。

さて、当時の経済に話を戻しましょう。

スタグフレーションという単語を耳にした方はいらっしゃるかもしれません。インフレーション(物価が上昇すること)が長期間続く(停滞している)ことを指してスタグフレーションと呼びます。オルタナティブロックが流行る前のアメリカではまさにそのスタグフレーションの中にあり、増加していく不幸指数に国政は頭を抱えていました。レーガン大統領とその後に続くブッシュ大統領による政策は、長く続くスタグフレーションを乗り越えるために様々な政治的な実験を繰り返しましたが、結果としてアメリカに大きな負債を残す政策となってしまいました。

そうした歴史的な背景の中で、所謂「ロック」と呼ばれていたジャンルは包括的な入れ物となり、オルタナティブロックを初めとする様々なジャンルが生み出されました。つまり、オルタナティブロックが生まれる背景には当時のアメリカ政府による政策の失敗、それにより開いた貧富の差による不平や不満とその抑圧や不安があったといえます。

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