不思議な夜に
君は懐中電灯 燈しつつ
今宵の風の冷たさに
今やっと気づくのだ
彼らはこの不思議な大停電の夜に何を思って、何処へ向かうのでしょうか。現実世界のようですが、私たちが生きている世界とは違った現実。どこか抽象的で世界線がうやむやになっている点は楽曲の大きな魅力ともいえます。
2ndシングルのOrphansでは前半と後半で語り手が変わります。視点の変更をすることによって浮かび上がってくる状況の描写は、登場人物である男の子と女の子の互いの説明を違和感なく行っています。
終日 霧雨の薄明かりが包む 白夜の火曜
気が狂いそうなわたしは家での計画を実行に移してみる
(別の世界では)
2人は姉弟だったのかもね
(別の世界がもし)
砂漠に閉ざされていても大丈夫
青春小説のワンシーンを切り取ったような歌詞ですが、内容を深く考察してみると詩の導入部分から平行世界への言及を匂わせるなど、ここでもやはり日常の中に潜む非現実的を描いているのです。
ceroが影響を受けていると公言しているフリッパーズ・ギター。そのメンバーだった小沢健二が2月22日に約19年ぶりに発売したシングル「流動体について」もまた偶然にも平行世界を歌っています。時代感を捉える力というのもceroの歌詞が評価される理由なのかもしれません。
ここまでceroが描く平行世界に言及しましたが、魅力はそれだけではありません。最新シングル「街の報せ」では日常をドラマチックに魅せています。リスナーそれぞれの”街”が思い浮かぶようなフレーズに胸打たれるリスナーも多いのではないでしょうか。
ファミレスで聞くロイ・ハーグローヴ
国道沿いで買う缶コーヒー 煙草はほどほどに
携帯の充電はとっくにきれたけど
坂道登り 振り返れば 悪くないんだよ
そして滲み出る音楽への愛。私たちの毎日に寄り添う音楽を特別なものではなくありふれたものとして肯定しています。
みんなも歳をとり いつかはいなくなるけど
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